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Scope3算定、SSBJ基準対応で何が変わる?実務者が知るべき課題と対策

こんにちは。

LCAコンサルタントの小野あかりです。

前回のコラムでは、SSBJ開示基準公開に伴いScope3の算定について解説をしました。


SSBJの開示基準に則る場合、Scope3の算定ではどのような部分に気を付けるべきなのか?といった点に注目した解説記事を書いていきたいと思います。

(Scope3算定に関する基礎知識や注意点は、前回のコラム記事でご紹介していますので、そちらも併せてお読みいただけたらと思います。)


目次



1.はじめに:SSBJの意義

サステナビリティ基準委員会(SSBJ)は、国際サステナビリティ基準審議会(以下「ISSB」という。)の設立を受け、2022年7月に、日本において適用されるサステナビリティ開示基準の開発及び国際的なサステナビリティ開示基準の開発への貢献を目的として設立されました。


2025年3月にSSBJが公表した気候関連開示基準は、企業が気候関連リスクや機会に関する情報を適切に開示するための重要な指標となります。

SSBJ基準は、企業の財務報告の主要な利用者が、投資判断を行う際に必要な気候関連情報を提供するために設けられています。これは企業が気候リスクや機会をどう認識し管理しているかを明確にし、持続可能な社会への移行を促進する目的を持っています。



2.SSBJ開示基準報告書の概要と企業が気にするべきポイント

SSBJの基準は、企業が直面する気候関連のリスク(物理的リスクと移行リスク)及び気候変動がもたらす機会を包括的に開示することを求めています。

具体的には、企業の財務報告書を利用する投資家などの利害関係者が、その企業の気候変動への適応力や持続可能な経営への取り組みを評価するために有用な情報を得られることを目的としています。


企業が特に注意すべきは以下の点です。

  • 気候関連リスクと機会の識別: 企業活動に影響を与え得るリスクや機会を網羅的に把握する必要があります。これには、物理的リスク(異常気象、洪水等)および移行リスク(政策変化、市場変化など)の識別が含まれます。


  • 影響の評価(定量的・定性的): 識別されたリスクや機会について、企業の財務状況や事業戦略に与える影響を定量的かつ定性的に評価しなければなりません。評価に際しては、シナリオ分析を用いることが推奨されています。

  • 財務的影響の予測と開示: 短期、中期、長期における気候リスクや機会の財務的な影響を予測し、これを財務諸表と関連付けて開示することが求められます。特に、リスクが企業の財政状態や業績、キャッシュ・フローに与える具体的な影響を示すことが重要です。

企業はこれらの開示を通じて、自社の気候関連リスクや機会への対応状況を明確に伝えることが期待されます。これにより、投資家などのステークホルダーからの評価や信頼を高めることができます。



  3.TCFDとの関連性

SSBJの気候関連開示基準は、国際的に広く利用されているTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)などと整合しており、これらのフレームワークとの親和性が高いのが特徴です。企業は既存のTCFDの枠組みに基づいて情報を整理し、SSBJ基準への適用を円滑に進めることが可能です。


本報告書は、TCFDの4つの主要な柱と高い整合性があります。

  • ガバナンス

    • 監督責任を負う機関または個人を明確に特定する

    • 気候関連のリスクおよび機会を監視および管理するためのプロセス

  • 戦略

    • 気候関連のリスクおよび機会の財務上の影響を分析する

    • さまざまな気候関連シナリオ下での回復力を理解するためのシナリオ分析を実施する

  • リスク管理

    • 気候関連リスクの特定、評価、優先順位付け、モニタリングのためのプロセス

  • 指標と目標

    • 温室効果ガス(GHG)排出量(スコープ1、2、特にスコープ3)の開示

    • 排出量の測定と開示に一貫した方法(GHGプロトコルの基準)を使用する

これらの側面は、TCFDの枠組みの要素と一致しており、明示的に言及している部分もあります。



  4.SSBJ基準に則った場合のScope3算定の注意点

SSBJ基準では特にScope3(バリューチェーンで発生する間接排出)の開示が強調されています。その中でSSBJ開示基準に則ってScope3を算定する際に、いくつか注意していただきたい点があります。


【注意点】

  • カテゴリー別の把握と開示: Scope3は15カテゴリーに分けられ、それぞれ個別に排出量を算定・開示する必要があります。 つまり、各カテゴリー(購入した財・サービス、資本財、上流・下流輸送、製品の使用・廃棄など)の排出量を分解し、具体的に開示することが求められます。

  • 測定方法の透明化: 排出量の測定に際し、「GHGプロトコル(2004)」を基本とし、異なる方法を採用する場合はその根拠や法的背景を明確に開示することが求められます。

特に注意すべき点として、排出量の測定に「一次データ(直接収集したデータ)」を可能な限り使用する、というルールが課されており、これが難しい場合は「二次データ(データベースや業界平均値)」の使用を認める、としております。

そのため開示対象企業には、バリューチェーン上の一次データ(直接提供されたデータ)と二次データ(データベースや統計など)の区別を明確にし、データの正確性を高めるためのプロセスを整備することで、データの取得・精度の向上を図ることが求められます。



  5.既に算定したScope3が開示基準に満たないケース

多くの大企業がすでにスコープ3排出量の算出を行っている一方で、部分的に、企業がこの新しい基準の要件から外れてしまう可能性もあると考えられます。

  • データの質に関する問題(一次データと二次データ):

    • 現在、多くの企業はバリューチェーンから直接収集した一次データよりも二次データ(業界平均や統計データ)に大きく依存しています

    • この基準では、より高い透明性と正確性が求められ、可能な限り一次データの使用が推奨されています

      例)A社はB社やC社からパソコンを購入しています。この場合、パソコンの排出量として計上するデータ(一次データもしくは二次データ)には下記のような明確な違いがあります。

      一次データ:B社やC社から直接聞き取り・収集したパソコンの排出量データ 二次データ:3EIDなどに入っている平均的な排出量データ

      SSBJでは可能な限り一次データの使用が推奨されているとのことから、今後、SSBJ開示を求められる企業のサプライヤーも、Scope3やLCAを行うことで、様々な環境負荷の数値を出していく必要が出てくると考えられます。

  • カテゴリーレベルでの内訳:

    • スコープ3の測定を行っている企業は、すでに広範囲にわたって測定を行っていることが多く、定義された15のカテゴリー(購入商品、資本財、従業員の通勤、製品の使用、投資関連の排出など)のレベルでは十分な透明性が確保されていないことがよくあります

    • SSBJ基準では、特定のカテゴリーレベルでの排出量の報告が明確に義務付けられており、企業に対して詳細性と透明性の向上を求めています

  • 財務計画との統合:

    • 現在、多くの企業が実施しているスコープ3の開示では、財務への影響に関する詳細な分析が欠如しています

    • この基準では、スコープ3の排出量が財務計画、資産評価、将来の投資または売却の意思決定にどのような影響を与えるかについての定量的および定性的な情報を明示的に要求しています

  • 一貫性と方法論:

    • 一部の企業は、管轄区域特有の規則により、GHGプロトコル(2004年)から若干逸脱した方法論を使用している可能性があります


    • この基準では、GHGプロトコルの要件からの逸脱のすべてを開示し、明確な根拠と調整を行うことを規定しています。


5-1.SSBJ開示基準クリアの簡易チェック方法

企業が開示基準をクリアしているかの簡易チェック項目として、次のポイントを確認できます。

  • スコープ1~3の全カテゴリーの排出量が明確に算定・開示されているか

  • 算定方法は「GHGプロトコル(2004年)」に従っているか、もしくは異なる場合はその理由と方法を明記しているか

  • 気候関連リスクと機会に関する定量的影響および定性的影響を開示しているか



  6.Scope3算定と並行して行うべきこと・注意点

開示を求められる企業には、Scope3算定と同時並行的に準備しなければならないデータ・資料などがあります。

対応が必要な項目として、例えば、以下のようなものが挙げられます。


  • 定量的情報と定性的情報の両輪を重視: 定量的なデータだけでなく、見積もりの不確実性が高い場合は、その理由と定性的な影響を具体的に示す必要があります。

  • 財務的影響の明示: Scope3排出が企業の財務計画や資産・負債に与える影響を具体的に分析し、開示します。

  • シナリオ分析の活用: 気候関連のシナリオ分析を用いて、気候変動がビジネスモデルに与える影響を評価し、レジリエンス向上策を開示します。

  • 内部統制・ガバナンス体制の強化: Scope 3排出に関する情報収集・管理プロセスを企業内で制度化し、ガバナンス機関または経営陣がその進捗を監督する仕組みを整えることが求められています。



  7.開示に向けて企業はいま何をするべきか?

企業は、自社だけでなく取引先や消費者を含むバリューチェーン全体を見据え、排出削減に向けた具体的な行動を進めなければなりません。

特にTCFDに基づく開示をすでに実施している企業は、この新しい基準に完全に準拠するために、以下の側面に注目しながら開示への準備を行うと良いと思います。


  • 現在のスコープ3算定方法を評価する

    • GHGプロトコルとの整合性を確保し、逸脱がある場合はその理由を明確に開示する。

  • 一次データの収集を増やす

    • 一次データの利用を増やし、正確性と信頼性を向上させるために、サプライヤーやバリューチェーンの他のパートナーを関与させる。

  • 財務影響の開示の強化

    • スコープ3排出量の見識を戦略的財務計画に統合し、現在の財務影響と予測される財務影響の両方を開示する。

  • カテゴリーレベルの開示

    • 15の定義されたカテゴリーに従って排出量を明確に開示し、利害関係者がリスクと機会をより適切に評価できるようにする。

  • ガバナンスと内部統制プロセスの強化

    • 気候変動リスクと排出削減戦略に関連するガバナンス構造における役割と責任を明確にし、文書化する。



  8.おわりに

本コラムでは、SSBJの『サステナビリティ開示テーマ別基準第2号 気候関連開示基準』を踏まえ、企業がScope3算定において特に注意すべきポイントを解説しました。

SSBJ基準は気候関連リスクや機会の明確な開示を企業に求めるものであり、Scope3排出量の透明性や財務影響の明示化がより一層重要となっています。


実際にコンサルティングを行っていると、多くの企業様がScope3の算定に課題を抱えていることを日々感じています。

特に一次データ収集への対応は困難を極めており、企業間の連携や内部統制の強化が急務であると実感しています。

SSBJ基準への対応は確かに簡単ではありません。しかし、これを契機にバリューチェーン全体のデータ整備やガバナンスの向上に取り組むことは、企業価値を高め、持続可能な経営を進める絶好の機会になってくるとも考えられます。

今後も皆様がスムーズに開示対応を進められるよう、有益な情報を発信していきたいと思います。


Scope3算定をご検討の方、算定に関するお悩みをお持ちの方がいらっしゃいましたら、当社までお気軽にご相談ください。

概要のご説明・算定支援・算定後の出口戦略まで、丁寧にご対応させていただきます。

また、LCA全般に関するご相談も受け付けております(初回1時間無料相談も実施中です)。



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