こんにちは!
LCAコンサルタントの小野あかりです。
この記事では、実際にLCAを実施する段階で必要になってくる
◆ インプットデータ
◆ 原単位
について、解説をしていこうと思います。
目次
1.LCAの算定方法
LCAは、製品やサービスの環境影響を評価するための手法であり、何かしらの製品・サービスが環境に与える影響を測ります。
主に下記のような評価対象物質や環境影響項目ごとに数値を出していきます。
*CO2やCH4, NOxなど ←いわゆる温室効果ガス(GHG)
*水使用/水消費量 *金属
*土地利用/土地改変 ←生物多様性にも寄与する
etc...
LCAの数値を出す際の算定方法はかなりシンプルです。
= 活動量 × 原単位
ただし、適切な原単位が選択されているかどうかによってLCAの結果が大きく変わってしまったり、信ぴょう性に影響することがあるため、原単位の選択が非常に重要になってきます。
また、原単位の選択を行っていく際の決め手の1つに"活動量データ"があるので、原単位だけでなく活動量にも注意を払う必要があります。
(そもそものLCAに関する概要やメリット・注意点に関しては別の記事で解説をしているので、気になる方はぜひそちらもご覧ください。)
2.LCAにおけるインプットデータについて
インプットデータはLCAにおいて、製品やサービスのライフサイクル全体(資源採取段階から廃棄段階まで)にわたる環境負荷を評価するための基本的なデータです。
スマートフォンを例にした場合では、各プロセスで以下のようなインプットデータが必要になってくると考えられます。
このインプットデータと、原単位と呼ばれる係数を掛け合わせてあげることで、LCA評価結果は算出されていきます。
= インプットデータ × 原単位(係数)
算定方法自体はかなりシンプルですが、適切な原単位が選択されているかどうかによってLCAの結果の信ぴょう性が変わってきてしまうため、原単位の選択が非常に重要になってきます。
また、原単位の選択を行っていく際の決め手の1つに"インプットデータデータ"があるので、原単位だけでなくインプットデータにも注意を払う必要があります。
2.1 インプットデータの種類
インプットデータには、
◆ 物量ベースのデータ と、
◆ 金額ベースのデータ
の2つのタイプが存在します。
どちらのデータを入手できたかによって、割り当てる原単位データも変わってくるので、とても重要なポイントです。
下記に、それぞれのデータの簡単な説明を記載していきます。
(物量ベースのデータ)
重量や個数、エネルギー単位や体積、面積あたりの情報を示します。 例:スマートフォンの製造段階 プラスチック → ●● kg 金属 → ●● kg 電力 → ●●kWh(MJ) 工業用水 → ●●m3 といった具合です。
(金額ベースのデータ)
名前の通り、円やUS$などの金額あたりの情報を示します。Scope3などの組織評価や国、全世界の評価では、金額情報は活用されることが多いです。
正確な評価に繋げるためには、生産者価格や購入者価格、年度による違い、物価の影響などを把握する必要があります。単純な製品評価の場合はそういったことを加味する必要のない物量ベースのデータを入手して活用する方をオススメします。
データ収集は地道で泥臭い作業になることが多いですが、LCAの根幹となる工程ですので根気づよく対応することが肝要です。
次に、インプットデータと同様に重要な役割を持っている原単位について簡単に解説をしていきます。
3.LCAにおける原単位について
原単位とは、活動量(例:燃料の使用量や電力の消費量など)に対応する温室効果ガス等の排出量を表す係数のことです。
LCAにおいては、製品のライフサイクル全体にわたる環境負荷を算出するために、この原単位が重要な役割を果たします。
それぞれ細かな原単位情報を集めたものを、原単位データベースと呼んだりしています。
3.1 原単位の種類
原単位には大きく分けて、積み上げ法と産業連分析の2種類があります。
それぞれ長所と短所があり、同じケーススタディでも用途や状況から判断してどちらも活用されることがあります。
下記でそれぞれの特徴などをご紹介します。
積み上げ法
積み上げ法で良く使用されるデータベースには、IDEA(Inventory Database for Environmental Analysis)とecoinventがあります。
2つのデータベースの大きな違いとしては、
◆ 評価の地理的範囲 → IDEA:日本国内で発生した活動に対する原単位が多く揃っている
Ecoinvent:海外(特に欧州)で発生した活動に対する原単位が多く揃っている
◆ データセット数
→ IDEA:約5,000
Ecoinvent:約18,000
◆ 活用している人
→ IDEA:日本国内で製品の調達・製造・販売などを行っている企業
Ecoinvent:日本国内のグローバル企業、欧州諸国を中心とした世界中の企業
が挙げられます。
基本的にIDEAは日本国内に強く、Ecoinventは海外(特に欧州)に強い、と覚えていただければと思います。
ちなみに、どちらのデータベースも取得の際には料金が発生します。
産業連関法
産業連関法で良く使用されるデータベースには、3EID(Embodied Energy and Emission Intensity Data)とEoraがあります。
2つのデータベースの大きな違いとしては、
◆ 評価の地理的範囲
→ 3EID:日本国内で発生した経済活動に対する原単位
Eora:海外で発生した経済活動に対する原単位
◆ 部門数
→ 3EID:国内、約400部門
Eora:世界 190 カ国、計 15,000部門
◆ データタイプ
→ 3EID:国内反映型
→ Eora:実態反映型
◆ 取得に関わる料金
→ 3EID:無料
Eora:有料
◆ 活用している人
→ 3EID:日本国内で製品の調達・製造・販売などを行っている企業
Eora:日本国内のグローバル企業
が挙げられます。
(余談ですが、WFのデータベースは当社代表の小野雄也が開発を行いました。)
原単位データベースについては、積み上げ法か産業連関法かだけでなく、各原単位の特徴や内容をしっかり確認・把握した上で用途に合った活用が望ましいと言えます。
また、どのデータベースにも適した値がない場合には、独自に原単位を開発することで対応を行っていきます。
4.独自原単位開発の必要性
LCAの精度と効果を最大化するためには、企業や業界固有のデータが非常に重要です。
3章で解説したような標準化された原単位データベースは便利ですが、全ての企業や製品プロセスに最適化されているわけではありません。
ここでは、独自の原単位を開発する必要性について詳しく説明します。
競争力の強化: 独自の原単位を開発することで、特定の産業や企業の特性に完全に合致した評価を行うことができます。この結果、製品の差別化や市場での競争力が強化されます。
精度の向上: 独自のデータを使用することで、評価結果の精度が大幅に向上し、その結果、環境改善策の効果をより正確に把握できます。これは、環境への負荷を低減するための具体的かつ実行可能な施策を立案するのに役立ちます。
顧客・ステークホルダーへの透明性: 独自の原単位を用いたLCAは、顧客やステークホルダーに対して透明性を持って環境影響を説明するのに有利です。これにより、企業の信頼性とブランド価値の向上が期待できます。
5.LCAコンサルタントの役割
LCAの評価プロセスは非常に複雑であり、多くの専門知識と技術が求められます。この章では、いくつか例を挙げながら実際にLCA評価を実施することの難しさとLCAコンサルタントが果たす役割について解説をしていきます。
インプットデータ収集の課題
LCAの初期段階では、評価対象となる製品やプロセスに関する大量のインプットデータを収集する必要があります。
2章で解説した通り、これは、製品の材料、エネルギー消費量、廃棄物の種類と量など、多岐にわたるデータです。このデータ収集は、企業内部だけでなく、サプライチェーン全体にわたるため、非常に手間がかかります。
LCAコンサルタントの支援: コンサルタントは、経験とノウハウを活かし、効率的なデータ収集方法を設計します。また、信頼性の高い計測器の情報などを提供することで、精度の高いデータ収集を支援します。これにより、企業はデータ収集の課題を大幅に軽減できます。
原単位データベースの選定の難しさ
LCAには様々な原単位データベースが存在し、それぞれが異なる特性と用途を持っています。3章で解説したように、Ecoinvent、IDEA、3EID、Eoraなどがありますが、どのデータベースを活用することが評価に最も適しているかを判断することは非常に難しいです。各データベースには、それぞれの強みと弱みがあり、間違った選定は評価結果に大きな影響を及ぼします。
LCAコンサルタントの支援: 当社のLCAコンサルタントは、各データベースの特性と用途を深く理解しているため、プロジェクトに最適なデータベースを選定するアドバイスを提供します。また、異なるデータベースを組み合わせて利用する場合にも最新の注意を払いながら、データの一貫性を維持します。
原単位の割り当ての難しさ
収集したデータを基に各プロセスや製品に適切な原単位を割り当てることは、LCA評価の精度に直結する重要な作業です。しかし、異なるプロセスや製品間でのデータのばらつきや不確実性が存在し、これを正確に反映させるのは容易ではありません。
LCAコンサルタントの支援: 当社のコンサルタントはこれまでの経験で得た知識・経験から、データばらつきの影響を最小限に抑える努力をします。また、データ解析と結果の解釈において、専門知識を活かして精度の高い原単位割り当てを実現します。
独自原単位開発の難しさ
前述の通り、標準的な原単位では特定企業や業界に完全に適合しない場合があります。独自の原単位を開発することで、LCAの精度をさらに向上させることができますが、このプロセスは非常に複雑で時間とリソースが求められます。
LCAコンサルタントの支援: コンサルタントは、独自原単位の開発においても重要な役割を果たします。具体的には、必要なデータの特定、精度の高いデータ収集方法の提供、解析方法の選定などを支援します。 この独自原単位の開発支援は、LCAコンサルタントの中でも特に高い専門知識を持った人しか行うことができないため、依頼をする際には注意が必要です。
6.まとめ
今回は活動量と原単位について、解説を行いました。
データ収集は地道で泥臭い作業になることが多いですが、LCAの根幹となる工程ですので根気よく対応することが肝要です。
また原単位データベースについては、積み上げ法か産業連関法かだけでなく、各原単位の特徴や内容をしっかり確認・把握した上で用途に合った活用が望ましいと言えます。
LCAコンサルタントは、インプットデータ収集から原単位データベースの選定、原単位の割り当て、そして独自原単位の開発に至るまで、LCAの全プロセスにおいて頼りになる心強いパートナーです。
深い専門知識と豊富な経験を活かして、企業が正確で信頼性の高い環境影響評価を実現できるようサポートします。
当社代表の小野雄也は原単位の開発経験もありますので、ご不明点などありましたらお気軽にお問い合わせください。
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